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ファイナリストの活躍:「都留を楽しく!」ビジネスプランに込めた素直な想い。上田聖子さんの挑戦

上田聖子さん

café tobira オーナー

2021年ファイナリスト

—これまでどのようなチャレンジをしてこられたのですか?

私は、都留文科大学を卒業して、新卒でソフトウェア会社でエンジニアとしてキャリアをスタートしました。

当初はエンジニアを目指していたわけではなく、ちょうど第二次ベビーブームで、就職が難しい時期で、理想の仕事に就くことが難しかった頃でした。

入社してみたら、同期は専門卒や理系の大学の出身者ばかりで、女性もわずか1人。だから、会社としては私がすぐに辞めるだろうと思われていたんだと思うんです(笑)

最初は様々なプロジェクトのヘルパーのようなポジションで、率直に言えば、たらい回しにされることが多かったです。

でも、結果的にはさまざまな現場で経験を積むことができて、蓋を開けてみたら他の誰よりもプログラミング言語を習得することができていたんですね。

それで社内でもとても重宝され、同期のなかでも一番出世しました!(笑)忙しくも充実した日々を送ることができました。当時は、出張も多く、夜中まで残業をしたりして、相当ハードな働き方をしていました。

そんな生活を約7年続けた頃に、結婚妊娠がわかりそれを機に退職をしました。結婚当初は河口湖に住んでいて、子育てを楽しんでいました。河口湖は非常に子育て支援が充実していて、とても楽しく過ごしていたんです。

しかし、地元の都留に戻って来ることになって、転居したら全然楽しくなかったんです。というのも、当時、都留市には子育て支援センターもなくて、とてもつまらなくて。わざわざ河口湖まで通ったりもしていました。

でもある時、「これからずっと都留で子育てするのにこれではダメだ!」と思って、都留市で知り合った保育士のお友達たちと一緒に週1回、子どもとお母さんが集まる子育てサークルを立ち上げました。

そこでいくつもイベントを企画して、最終的には都留市以外のお母さんが参加してくださるまでに成長しました。お母さんって、孤独で孤立しがちなので、需要があったんですよね。サークル自体は解散してしまいましたけど、現在も形を変えながら読み聞かせの会がいまも続いています。

出産してから、それまで仕事に注いでいたエネルギーが有り余ったんですよね(笑)。家の中にこもって子育てしていても楽しくないじゃないですか。ただ「都留を楽しく」したくて。そういう気持ちは今も変わらないところです。

—そこからカフェの開業に至った経緯は?

子育てサークルで仲間が増え、その中にはさまざまなスキルを持つ方が多くいらっしゃったんです。せっかくならその方々に講師をお願いして何か新しいことを始めたいなと思ったんです。そこで、公共の施設を借りて「手仕事カフェ」というイベントを月1回開催するようになりました。

その間、一緒に子育てサークルを立ち上げた保育士の資格を持っているメンバーが保育をしてくれて、子供を預けたお母さんたちがイベントを楽しむという新しい試みを始めたんです。それから今度は、そこで作ったものを販売できるようになりたいと考えて、マルシェも企画しました。こうして色々な場づくりをしているうちに、今度はいろんな人たちが楽しめる場所ができればいいなと思って、カフェをやりたいと思うようになりました。

ただ、開業資金もなかったので物件を借りてすぐに開業するのは難しかったんですよね。なので、自宅のプレハブで菓子製造業許可を取得して、パンやお菓子を製造するようになって、大きなマルシェに出店をすることを始めました。このスタイルで「店舗のないパン屋」を5年くらい続けていました。

ところが、2020年に新型コロナウイルスが流行し始め、マルシェが中止になってしまったんです。今度は通販での営業を続けていたのですが、そのタイミングでこの店舗の前のオーナーさん(koto-ya)が、「お店を閉めようと思うんだけど、次にカフェやらない?」と声をかけて下さったんです。

机や椅子、食器もオーナーさんがくださって、開業資金もほとんどかけずに新しいお店を開くことができました。

—ビジコンに参加されたのはなぜですか?

「都留を楽しくしたい」という思いだけでビジコンに応募しました。

正直なところ、ビジコンも「こんなのあるんだ!ちょっとやってみたい!」という好奇心から応募してしまって。その後で「軽いノリでやってはだめなやつだった」と後悔しました(笑)

ビジネスプランとしてどこの地域でも再現性のあるものを作る必要があって、私にはそういう経験がなかったので、「無理だな」と率直に思ってしまったんです。

ただ、事務局の皆さんに「都留を楽しくしたいというコンセプトが素晴らしい」と励ましていただいて、なんとか最後までアイデアをまとめることができました。

—ビジコンに参加されて気づきはありましたか?

ビジネスはこうやって考えていかないといけないんだ、という気づきもありました。

ただ、同時に私が実現したいことは、特定のモノやコトをどうにかしたいというよりも、ただ「都留を楽しくしたい」ということだけなんだなと改めて気づかされました。

ビジコンを通じて、様々な人とのつながりができて、出会いが増えたことも大きいですね。これまでは、ずっと私1人の思いつきで自己責任の範囲内でやってきたんですけど、やはり自分1人でやれることには限界があって。市民の皆の力を集めてできることをやりたいという思いも芽生えて、「つるのもり」という市民団体も結成して活動を始めました。

—上田さんを動かす原動力は?

思いとかは正直なくて、シンプルにただ閃いたことはやってみたいと思うんですよね。「やりたいからやってみる」それが私の原動力だと思います。

例えば、私のこれまでしてきた挑戦で、一番ハードルが高かったことは、自宅の厨房を改装して菓子製造業許可を取得した時でした。その時は多少の資金もかけて始めましたが、思ったよりも早くその資金分の売り上げを立てることができたんです。だから思ったよりもいけるんだ、と思ってからは、チャレンジすることに躊躇がなくなりました。

飲食店をやりたいという人の最初のハードルは保健所の許可をとるということなんですよ。

よく自宅の厨房に見学にいらっしゃるんですけど、みなさん口々に「これでいいんだ!」とおっしゃるんですね。実はチャレンジをするときに勝手にハードルをあげているのは自分自身であったりするものなんです。

—今後どんなチャレンジをしたいですか?

何かやりたいと思っている人はとても多くて、話を聞いているうちにやれそうなことであれば、場を提供して一緒にやったりもしますし、雰囲気が別のところが合いそうだなと思えば、つなげてあげる。そんなこともしています。ですから、これからも都留で何かチャレンジしたい人のつながりを作る場になれればと思っています。

5年後はどなたかにお店をお願いして、もう全然違うことをしているような気がします(笑) 色々なアイデアの種は既にあるんですけど、その時に一番楽しそう!と思えることに挑戦しているんだと思います。もちろん失敗もしますよ。そしたらすぐに変えればいいんです。毎日小さな成功体験を積み重ねながら、これからも「都留を楽しく」していきたいですね。