ファイナリストの活躍:赤い野菜で都留市の農業を活性化!浅田一男さんの挑戦
浅田一男さん
浅田農園 代表
2022年ファイナリスト
—生涯活躍のまちビジネスプランコンテストとの出会いは?
私はもともと都留市内にある観光会社で働いていました。その会社は「第1回生涯活躍のまちビジネスプランコンテスト」のスポンサーとして支援をしていて、私は企業側の連絡窓口としてビジコンに関わることになったのがもともとのきっかけです。
それ以降は、個人としてビジコンのファイナリストを支援するサポーターとして活動していました。そして昨年、遂にファイナリストとしてビジコンに参加する決断をするに至りました。
実は、ずっとビジコンに出場したいという思いはあって、そのプランを温めていたんです。しかし、いつ挑戦すべきか悩んでいたんですね。ビジコン事務局の皆さんからの後押しを受け、ついに昨年挑戦することにしました。
第1回目のビジコンが開催された頃(2020年)、新型コロナウイルスのパンデミックが始まり、観光バス業界も厳しい状況にありました。そこで、農業と観光を組み合わせた「観光農業」という新しいアイデアが浮かび、そのコンセプトをもとにビジコンに挑戦しました。
—現在はどんなチャレンジをされていらっしゃるのですか?
現在、農園では主に赤色や紫色の野菜を取り扱っています。季節にもよりますが、現在(※取材当時9月)は、「大和ルージュ」という赤いとうもろこしをメインで栽培しています。これは浅田農園が山梨県で初めて栽培に挑戦した野菜なんですよ。山梨県ではまだ取り扱いが少ない希少な赤いとうもろこしで、テレビでも取り上げられ、多くの方々から好評をいただいています。現在では、地域の特産品として都留市のふるさと納税の返礼品としても提供されています。
最近では、都留市外からも関心を寄せていただくケースが多いですね。河口湖にある旅の駅でも販売しています。また、現在都内にあるレストランとも提携について協議しているところです。お陰様で販売チャネルが着実に広がっていて、あとは供給の安定性を確保できるように工夫を重ねているところです。
—元々起業を考えておられたのですね。
はい。もともと、「農業をやってみたいな」と思っていたんです。
そんな矢先に大怪我を負ってしまい、観光会社での仕事を続けることが難しい状況になってしまって。それを機に農業を始めることにしました。
でも正直言うと、そこまで長く続けるつもりはなかったんですよ(笑)
しかし、「大和ルージュ」に出会って、メディアでの反響もあって、ありがたいことに辞められなくってしまったというのが正直なところです。しかしビジコンを通じて「まちのtoolbox」を始めとした、私のチャレンジを続けて応援してくれる人たちが現れて、自分が想像を超える広がりができました。ビジコンに参加して良かったことの一つですね。
—起業する際のご家族の反応は?
元々思い立ったらすぐ行動するタイプなので諦められてますね。
実は観光会社の前には大企業に勤務していたのですが、そこを辞めたのも本当に急で(笑)
いつもチャレンジに対して妻や家族が寛容に受け止めて応援してくれていることには本当に感謝ですね。
—ビジコンにファイナリストとして参加してみていかがでしたか?
ビジコンに参加する前は、農業を単に「やろう」と漠然と考えていたのですが、ビジコンに参加して、事業のメイン要素とターゲットを明確にする重要性を認識しました。
以前は、自分の好きな野菜を育てることに焦点を合わせていましたが、それだけでは収益を上げるのは難しい。農園の差別化要素として赤や紫の野菜をメインにするアイデアもメンタリングを通じて生まれました。
また、ビジコンに参加して良かったのは、他のファイナリストとのつながりを築く機会も得られたことですね。例えば、黒澤さん(2021年最優秀賞受賞者)や、上田さん(2022年ファイナリスト)の経営するカフェと提携して、野菜を取り扱ってもらっています。
ビジコンを通じて、都留市でチャレンジをしたいと考えている人たちとの繋がりも生まれて、都留市が活性化しているのを感じています。
—現在はどんなチャレンジをされていらっしゃるのですか?
都留市で起業をしたいという同じ志を持つ人たちと協力し、さらなる挑戦を続けていきたいですね。
都留市で事業を始める人たちは、必ずしも都留出身者ばかりではないと思っています。多くの人が移住してきて、新たな事業を始めている人も多い印象です。ですから、そうした人たちの架け橋になりたいと思っています。
少しずつそのような活動も始めています。
例えば、「まちのtoolbox」と協力し、学生団体が連携しやすい環境を整備するための場づくりを始めました。
都留市にある都留文科大学では、地域で活動している学生団体がいくつか存在しています。通常は各自が個別に活動していることが多いのですが、協力し合い、アイデアを共有することで、より良い成果を出せるのでは?と思い、このような場づくりをしています。
また、同じ志を持つ仲間たちと共に「つるのもり」という市民団体を結成し、地域の魅力を広く伝えるための活動も開始しました。都留市の個人事業主に出店してもらう「つるのもりマルシェ」というイベントも企画しています。
—今後はどんなチャレンジをしていきたいですか?
「珍しい野菜を育てる」というコンセプトを中心に、私の手が届く範囲で確実に収益を上げる仕組みを作ることが目標です。
というのも、収益を上げるまでには前もって多くの投資も必要ですし、後発者が安定した収益を上げるというのは容易ではありません。
その中で、私は他の誰もが手をつけていないような野菜を栽培することで差別化を図りたいと考えています。そして、「ユニークな野菜の発祥の地」になりたいですね。
例えば、今年「シャドークイーン」と呼ばれる紫色のジャガイモの栽培にも挑戦しました。都留市ではこの品種を取り扱う農家はおらず、郡内でも栽培している農家はわずかな珍しいジャガイモです。今年は約300キロを収穫をしたんですが、反響が大きく、驚くほど速く売り切れてしまいました。「珍しい野菜」のニーズがあることを実感しました。
また、「農育」にも挑戦したいですね。
食卓に並ぶ野菜がどのように作られているか、知らないことも多いと思うんです。
たとえば、トウモロコシの実の数とひげの数が同じであることは、多くの子供たちは知らないでしょう。
そのようなことを、浅田農園での農業体験を通じて、子供たちにも伝える場を提供したいですね。そして、都留市のキャンプ場を訪れる子供たちが「農育」を目的として訪れるようになり、都留市の新たな観光コンテンツに成長させたいと考えています。